サッカーでは、いくら技術系を習得しても、凡人から優れた選手にはなれません。凡人から優れた選手になるためには、運動能力を高めること以外ありえません。ここを理解していない人が大変多いです。
パフォーマンスを上げるために肩甲骨をはがす
運動能力とは
運動能力とは大きな概念なので、人それぞれで様々な捉え方がありますが、私が思う運動能力とは、大きな力を発揮するための身体の使い方ができるかどうかです。
運動能力とは、車でいうとエンジン部分の事です。どれだけ車の運転技術を磨いたところで、普通車がF1の車には勝てないように、サッカーにおいてもどれだけ技術を磨いたところで、運動能力を高めなければ出力に限界があります。
そして、それらの身体の使い方とは
・手足の筋力に頼らず、体幹に近い大きい筋肉で動作が出来る
・上半身と下半身の連動
などなどです。
過去に、近くで見た選手の中で元フランス代表のリベリーがいますが、彼は常に手足はリラックスさせた状態で、まるで上から糸で吊られた操り人形かの如く、力感が無くプレーしていました。また別の表現をすると、身体が宙に浮いた状態で、無重力の中でプレーしているかのような動きでした。
これらの動きは、肩甲骨や股関節が柔らかく、それらをとても上手に使うことで、体幹付近の大きな筋肉から動作をスタートさせていたためだと思います。
しかし、ほとんどの人は体幹付近の筋肉を上手に使えていないため、手足などの末端の筋肉を力ませながら動作をしています。これは、言い換えると手足に重りをぶら下げてプレーしているのと同じです。
ジュニア世代でも、ほとんどが手足の筋力に頼って動作をしています。この状態で技術を習得していっても、エンジン部分を眠らせているので、真の優れた選手になれません。ですので、まずは体幹付近で動作ができるように、訓練することが必要です。
運動能力をどうやって身につけていくのか
では、どのようにしてコアに近い部分の筋肉を使うのか。まずは、肩甲骨を上手に使えることが大事になります。
背中に張り付いた肩甲骨が立つと、身体は4足動物系になってきます。そうなると、肩甲骨の動きに背骨や肋骨なども反応し、明らかに身体全体の運動が豊かになっていきます。
さらには股関節周りの使い方も上手になります。
これによりコアから動作を行うことが出来て、パフォーマンスが上がるのです。
ですので、まずは肩甲骨の稼働域を広げることが必須です。
肩甲骨とは
肩甲骨とは、背中にある肩と腕をつないでいる骨のことです。
肩甲骨は体幹とはつながっておらず、鎖骨の一点でのみでつながっています。そのため本来万能な動きができる特徴があります。
しかし、人間が日常生活の中で行う、食事を取ったり、スマホを触ったり、パソコンをしたりなどのような軽微な運動は、肩甲骨を固定させた状態により、小手先の自由度を高めることで可能にしています。
ですので、日常で肩甲骨を万能に動かす必要がないので、眠った状態の人が多いです。
しかし、スポーツの世界ではこれらが災いになります。なぜなら、このような軽微な動きとは異なり、力強さの点でもスピードの点でも、全く次元の違う圧倒的なレベルの高さを要求されるからです。
教え子に、現在U-18日本代表の選手がいますが、彼の肩甲骨は何の制限も無く万能に動きます。よって筋肉の質もとても柔らかく、コア部分で活動してきたことがよく理解できます。
ですので、こうしたスポーツの世界では、肩甲骨を万能に動かせる必要があります。
肩甲骨をはがす
本来、万能に動くはずの肩甲骨は、背中に張り付いたように固まってしまいます。
本来できる動きを邪魔している、これらの筋肉を弛緩させ、ストレッチさせることによって、この張り付いた背中から肩甲骨をはがしていきます。
これを巷で「肩甲骨はがし」と呼びます。
自分で剥がす方法と他人にはがしてもらう方法をお伝えします。
立甲とは
自身で肩甲骨を剥がして立てる方法があります。この方法を【立甲】と呼びます。その名の通り、肩甲骨を立てるという意味です。
この立甲の状態が、四肢動物の肩甲骨と同じ状態です。肩甲骨から腕まで一直線に伸びたラインが出来上がり、二等辺三角形の中に胸が吸収された形になります。この構造のおかげで、動物たちは重い体重を支えながら、110キロものスピードを出したりすることが出来るのです。
肩甲骨が寝ている状態は以下です。これは肩甲骨が使えていなく小手先の動作になります。強い力を発揮しようとした時に肩関節に負荷がかかります。スポーツでも、このような末端の筋肉に頼ってプレーしがちになります。
肩甲骨が立っている状態は以下のような状態です。肩甲骨から腕まで一直線に伸びたラインが出来上がり、肩関節もそのライン状の一点でしかなくなります。肩甲骨からパワーを出せるので、肩関節に負荷もかからず、強い力を発揮します。
それと肩甲骨が動くことで、背骨や肋骨なども呼応するので、身体全体の動きが多様化します。
立甲のやり方
四つん這いになって、背中から肩甲骨を立ち上がらせます。
・腕のくぼみを前方に向ける
・二等辺三角形を作る
・首を前方に押し出す
・背中を反らせない
この体制で、ぐーっと沈みながら肩甲骨を突き出していきます。最初は全く肩甲骨を意識できないと思いますが、やっていくうちに少しずつ意識できてきますので、毎日必ず行うことが大事です。
他人にはいでもらう方法
これは、肩甲骨を立たせるのでは無く、他人の力で、背中に付着した肩甲骨をはいでもらうというやり方です。
被験者は横になった状態で腕を後ろに回し、施術者は、被験者の肩の前の部分を押さえながらマッサージし、背中に浮き出てきた肩甲骨を掴んで、稼働させながら剥いでいくというやり方です。
サッカーでどのようなパフォーマンスが出せるか
しかし、立甲ができたとはいえ、凡人がプロになったりとか、そこまで成長しないのではと疑問に思う人もいるかと思います。
確かに、立甲ができたからといって凡人がプロになれるかといったらそんな甘いものではないです。
ただ、冒頭でもお話しした通り、大きいエンジン部分を眠らした状態では、どんなに頑張っても凡人から抜け出すことはできません。
技術は簡単に習得できますが、身体の使い方を向上させるのはとても困難です。
だからこそ、難しいからこそやる価値があると思います。才能のある子どもとは、運動能力が高い子どものことを言います。それは天性で、もって生まれたものですが、それを真似することが一番手っ取り早く凡人から抜け出す方法です。
現在レアルマドリードの下部組織に所属している中井くん(ピピ)は、小学2年生の時点で運動能力はずば抜けて高かったです。彼は、技術の面でメディアに多く取り上げられていましたが、彼の一番抜けていた点は、寄せの速さと身体をぶつけるインパクトの強さでした。
それは、小学2年生のレベルでは無かったです。私の言う運動能力とは、足が速い、力が強いなどではありません。瞬間的に大きな力を出せるかどうかです。それは身体の使い方が巧みでなくては体現できません。
ぜひ、皆さんもこの機会に身体の使い方について考える機会をもってもらえればと思います。
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